アダルトチルドレンのための静岡発 磐田浜松 心理カウンセリング

アダルトチルドレンの「愛着」不安を考える – 静岡磐田で心理カウンセリング

こんにちは、汰緒鞠映です。

磐田市北部のお茶畑を見下ろすのどかな一角で、心理セラピーと心の習慣作りのプログラムを提供して、生きづらさ、自信のなさ、人間関係の悩みを抱えた方々をサポートしています。

アダルトチルドレンの生きづらさを抱えた人がルームを訪ねてくださることが多いです。

アダルトチルドレンについてはこちらの記事をどうぞ『生きづらさから自分らしさへ』

アダルトチルドレンの生きづらさは独特なのですが、その理由のひとつに、アダルトチルドレンが抱える「愛着」の不安が関係していると言えます。愛着障害と呼ばれることも多いです。

今日は「愛着」についてご紹介することで、アダルトチルドレンの生きづらさを抱えるあなたへの改善のヒントになればと思います。

愛着という意味

「愛着」という言葉はわかりにくいので、まず説明が必要です。

感情的なきずな

英語では「愛着」をアタッチメントと言い、イギリスの児童精神科医、ジョン・ボウルビィが提唱した「アタッチメント理論」は有名です。ボウルビィの言葉では『人類には親密な感情的きずなを築こうとする普遍的要求があり、恐怖や不安にさらされたときに親密な対象の保護を求めることでみずからの生存確率を高めることができる』と説明されます。

もっとわかりやすい言葉で言いかえると、アタッチメント(愛着)とは「守ってくれる誰かとの感情的な信頼の絆」のことなのです。

この絆は、乳幼児と児童には生存するために必要不可欠なもの。無力な子どもは、親に守ってもらうことで身体的にサバイバル(生存)して自律できるようになるわけですが、当然ながら心の成長という面で大きな影響を持ちます。

それは、子ども時代に保護してくれた誰かとの絆がどのようであったか、ということが土台となって、成長してからのその人の自尊心、自己肯定感、人間関係の形が作られる、ということなのです。

アダルトチルドレンが大人になって「人生が生きづらい」と感じる理由は、子どもの頃の愛着の絆(アタッチメント)が、弱かったり、か細かったり、歪んでいたり、途切れ途切れだったりして、安定した絆ではなかったから、ということが多いに考えられます。

他人との付き合い方に困難を感じる人について、「愛着不安がある」などと形容されることもよくあります。

親に愛情がなかったのではない

世間では、問題を起こす人について「親の愛情がなかった」と評されることがあります。しかし多くの場合、愛情の問題ではなく、愛着の問題なのです。愛着と愛情を混同して理解されていることがしばしば見受けられます。

その人は子どもの頃に愛着という感情の絆が十分に得られなかったのだ、と考えるのが適切です。親に愛情がなかった、という単純な決めつけは避けるべきです。

現実的に、もし本当に親に愛情がなければ、子どもが大人になるまで生き延びる可能性は低いです。人が成人になっているなら、どの人も親から愛情を受けて、世話やしつけをされて大きくなっているのです。

タオマリエの心理セラピーでは、アダルトチルドレンと自覚し生きづらさで悩むクライアントさんには、「親に愛されなかったのではなく、親が愛情を示す方法が、子どもの自分が求める愛情や方法ではなかった」と理解してもらうようにしています。

愛着の安定した人とは

世の中には、愛着不安な人たちがいる一方で、愛着の安定した人たちも確かにいます。その人たちはアタッチメントのタイプでは安定型と呼ばれます。おそらくは「生きづらさ」という感覚を知らないでしょう。

「安全基地」という役割

愛着が安定した人たちは、子どもの頃に養育者との良い関わり(良いアタッチメント体験)が多いと考えられます。それは、親が必要な時にそこにいて、安定してニーズ(励ましや支援)を満たしてくれ、介入が要らない時には見守ってくれる、というようなもので「安全基地」と表現されます。

安全基地は、その基地から子どもは外の世界へ踏みして冒険することができ、その基地に戻ってくると歓迎され、心も身体も栄養を得ることができ、安心や安全を与えてもらえるような役割をもつものです。愛着形成にとても大事な要素です。

良いアタッチメント経験

子どもの頃の良いアタッチメント経験は、安全基地があることに加えて、「スキンシップが多い」「非言語・言語で存在を肯定してもらえる(笑顔・誉め言葉)」「話を聞いてもらえ、受け入れてもらえる」「一緒に何かをしてくれる」「両親が仲が良い(家族の中でけんか、悪口などがない)」などがあげられます。

このような体験を得ることで、安定的な愛着形成ができた人(安定型)は、対人関係で不安を感じることが少なく、自分の気持ちを自然に感じることができ、他者に伝えることも問題なくできると言われます。

これは、まさしくアダルトチルドレンが最も苦手とするところですよね。うーん、そんな風になれたらいいなあ、なんて声が聞こえてきそうです。

愛着不安なアダルトチルドレン

ではここから、「アタッチメント(守ってくれる人との安定した信頼の絆)の体験に問題を抱えていた」という観点でアダルトチルドレンの生きづらさについて、私自身の感覚やクライアントさんのケースから特徴をいくつか見てみたいと思います。

相手の顔色や反応に敏感

あなたは子どものころ、人の顔色をうかがう子どもでしたか?アダルトチルドレンは特にこの能力が高いと感じます。相手の顔色や反応や、空気を敏感に察して、その上で自分の態度や行動を決めることで、子ども時代をサバイバルしてきたからです。

自分は相手にどう思われているのか、良く思われているのか、悪く思われているのか、役に立つと思われているのか、あるいは別にどうでもよいのか、など絶えず気にします。相手のささいな表情や言葉などで、相手を怒らせたり気分を悪くさせたりしたのでは、と心配したりもします。

さらに、自分の評価が相手にとって否定的だと感じてしまうと、自分の存在が揺るがされるような強い不安に駆られます。

これまでの相談者さんの中でも、仕事で上司に怒られると、明日からもう会社にいけない、自分なんていても意味ない、もうこの世の終わりだ、などと感じて落ち込む、という方も多くいらっしゃいました。

自分の存在価値は、他人の評価によって決まると思い込んできたためです。

承認欲求がとても強い

顔色をうかがうのが上手な人の中には、承認欲求が強い人が多いと言えます。承認欲求は、相手に認められたい、気に入られたい、愛されたい、という思いを反映するものです。

相手に認められるために、相手の期待や意向を読み取ってそれに応える対応をしたり、相手を喜ばせるために、自分のことを後回しにして、世話をしたり奉仕をしたりします。

あなたがもし、子どものころ「よい子」とか「優等生」と言われて頑張っていたとしたら、この特徴に該当するといえるでしょう。

私自身、子どもの頃から親に迷惑をかけない良い子、優秀な子でいるためにいろいろ頑張っていたことを思い出します。お手伝いをちゃんとして勉強もがんばって、父や母が私のことを誇りに思ってくれることで、安心を感じていました。

母が具合の悪い時は看病をしたり、父と喧嘩して母が泣いている時は、父に怒ったりお説教したり、泣いている母を慰めたりしていたんです。

これって、本当は子どもが親に対してすることじゃないですよね。まさに、大人と子どもの役割が逆転している状態です。

アダルトチルドレンの特徴として、子どもなのに家の中で大人のような役割をしていた場合が多いです。アダルトチルドレンが「子ども時代がなかった人」と形容される所以です。

共依存の関係を持ちやすい

以前のご相談者さんで、パートナーとのことで相談に見えた方がいらっしゃいました。その女性は子どもの頃、お父さんと友だち同士のように仲が良く、お父さんからお母さんの愚痴を聞いたり相談に乗っていたということでした。

そしてその方の現在のパートナーも愛着不安のいくつかの問題があり、彼の色々な問題の後始末や泣き言など感情の面倒を彼女が見なければならないような関係性でした。子どものころの父親に必要されたのと同じ方法を、今のパートナーとの関係で再現していたのです。

男女関係には、承認欲求が不健全な形で満たされているケースは珍しくありません。それは、相手の欲求を満たして初めて自分の存在価値が見いだせるという、不平等で偏った関係です。

残念なことに、本人は自分自身をないがしろにしていることに気がつかないことが多いです。

見捨てられ不安

「見捨てられ不安」というのは愛着不安を抱える人がもつ典型的な特徴といえます。ここでは見捨てられ不安を、二つの視点に絞って見てみたいと思います。

ひとつは「愛されない自分でいる」というスタンス、もうひとつは「嫌われる前に自分から関係を切る」というスタンスです。

 愛されない自分でいる

これまでご相談者さんから「好きだな、いいな、と思う相手に対して、自分は冷たくて興味ない素振りをしてしまう。本当は話をしたいしお付き合いしたいと思うのに・・・これってなぜなんでしょうか」という質問を受けたことが何度かありました。

子どもの頃に安定的な愛着の体験をし損ねた人は、誰かに認められる自分、愛されている自分を渇望しながらも、その反面、自分は愛されない、気に入られない、認めてもらえない、というようなあきらめと不安を心のどこかに抱えています。

この二つの葛藤する気持ちは不自然で矛盾した形で表出します。上で述べたような、好きな人にはわざと興味のないフリをする、といった表れ方です。

「見捨てられ不安」は、文字通り、相手から見捨てられることを不安に感じる傾向のことですが、不安という緩いレベルではなく、自分の存在価値を揺るがすほどの恐怖と言ってもいいかもしれません。

そのような「見捨てられ不安」を抱える人が、自分を恐怖から守る方法として取るのが、愛されない自分のままでいようとすることです。もし、いいなと思う人に想いを告げて、相手がOKしてくれたとしても、自分を認めてくれたり、愛してくれる保証はないと思えるのです。

何故なら、頑張る自分だったり、よい子、良い人、優等生の自分は、相手に認めてもらえるための仮の自分であって、本当の自分は空っぽだったり、本当の部分を隠していたりするので、「本当の自分を知ったら相手は去っていくだろう、それなら、最初から誰からも愛されない自分でいる方が安心だ」と思えるからなのです。

どうでしょう、あなたにも同じような感覚の覚えはあるでしょうか?私自身はこの感覚が強すぎて自分をコントロールするのがとても辛かったのを記憶しています。

嫌われる前に関係を切る

もうひとつの見捨てられ不安の観点は「嫌われる前に関係を切る」というもの。大切にしてくれる相手との関係を自分から切ってしまう、というスタンスです。

アダルトチルドレンが大人になって、自分とは全然違う環境で育った愛情深い恋人やパートナーに恵まれるということもよくあることです。

しかし、往々にして自分をすべて受け入れてくれる愛情ある相手に対して、自ら別れを切り出したり、別の人との関係に走ったりして、相手を遠ざけてしまうことがあります。

なぜ?と思えるのですが、それは心の奥に抱える「見捨てられ不安」の苦しさから逃れるためなのです。見捨てられる前に、つまり嫌われる前に自ら関係を断ち切る、という対処の仕方です。

愛着不安を持つアダルトチルドレンの場合、心の底に、自分は愛情を注がれる価値のある存在のはずがない、という疑いの気持ちが強くあります。そのため、相手から大切にされたり愛情をかけられると居心地の悪さを感じてストレスになったり、相手の優しさが重荷に感じられたりします。

また、その一方で、今度は相手が以前ほど自分をかまってくれなくなると、相手の愛情を疑りたくなります。ほらね、あなたは私のことを愛してなんかいなかったのよ、私なんて最初から誰にも愛されたりしないんだから、と心の中で叫んでいたりするのです。

どっちにしても苦しいわけです。だから、「嫌われる前に自分から関係を切ろう」という行動を取ってしまいます。行動というか、衝動と言うほうが適切です。

このように、恋愛や結婚において、アダルトチルドレンにとっては信頼できる人と愛情を育てていく、ということがとても難しいことだといえます。

私たちは、子どものころに自分を守ってくれる人との感情的な信頼の絆を得ることで生存することができます。この「アタッチメント」という体験を通して、私たちは心の中に自分に対する安心感や人に対する信頼感のようなものを育てていけるんですよね。

アダルトチルドレンの私たちには欠けているものだといえます。

ここまで、アダルトチルドレンの生きづらさを、愛着不安との関わりという観点からみてきました。まだ書き切れない特徴がたくさんあります。あらためて続きで書いていきたいと思います。

さて、あなた自身の生きづらさの特徴に該当することはありましたでしょうか?

揺りかごから墓場まで

現実的に、子ども時代に親や誰かからの保護を得られなかった人は、世の中にはたくさんいます。そのような人は、愛着の不安を抱えたまま、大人になって、他人との関係性がうまく築けず、自尊心も低い状態を続けていくしかないのでしょうか?

答えは、ノーです。

私自身の体験やクライアントさんの実例が証明するように、人は変わる力を持っているので、適切な方法を知り実行していくことで、幸せで安定した人生の道へと舵をきることができるのです。

冒頭でご紹介したボウルビィは、愛着の絆が乳幼児や子ども時代にのみ適用されるものではなく、人が自律性を獲得した後も、この絆は形を変え「揺りかごから墓場」まで、生涯を通して存続するものと述べています。

また、ニューロサイエンスによると、脳には神経可塑性があるため、人は何才になっても脳が変化し続けると言われています。

つまり、子どもの頃に親からのアタッチメント体験を得られないために、今生きづらさを抱える人でも、これから、いつでも変わっていけると言う可能性が、科学的に示唆されているのです。

このことは、アダルトチルドレン特徴を改善したいと思っている私たちには、大きな勇気を与えてくれるものと言えます。

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