こんにちは、汰緒鞠映(タオマリエ)です。
2022年が明けました。本年もどうぞよろしくお願いします。
静岡県磐田市の北部、お茶畑がひろがるのどかな場所の一角で、「自信がない」「対人関係が苦手」「不安が強い」「自分がきらい」「マイナス思考」などのお悩みをかかえる方々のサポートをしています。
タオマリエのセラピールームには、自分がアダルトチルドレン的傾向があると感じて、ご相談に見える方が多くいらっしゃいます。
今日は、アダルトチルドレン(AC)の特徴を持つ方々に知ってほしい心理学の言葉「値引き」についてお話します。
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Contents
「値引き」とは、有るものを無いとみなすこと
この「値引き」という言葉は、「交流分析」という心理学の中で登場する考え方です。
一般的には値段を差し引く、という意味ですが、交流分析で説明される「値引き」の定義は「問題解決に関連する情報を気つかずに無視すること」です。
言い換えると、「有るはず、または有るかもしれないものを無いとみなす」ことです。
大人である私たちには、問題に出会った時に、理性的に問題解決の行動を取るという選択肢があります。でも、実際には、問題が解決されないままの状態を続けることも多いです。
このような時には、自分の能力に対して「値引き」が行なわれていると考えられます。
自分の能力への値引き
我慢をし続ける理由
問題を解決するための行動を取る代わりに、何もしないでいることが意外にありませんか?
実際には何もしない、というわけではなく、「我慢」という苦しいエネルギーの使い方をします。
とても身近な例でいうと、どこかのレストランや会場などに行ったら冷房が効きすぎて具合が悪くなった、という経験はありませんか?私の身近ではよく聞く話です。
効きすぎの冷房の当たる場所で我慢し続けたためです。
冷房の風が直撃する場所で、何時間も座っているなんて、苦行に等しいと思えますが、かく言う私も、昔は寒かったり暑かったりは我慢するのが当たり前だと思っていました。
苦しい思いをする代わりに、他にできることがあるはずなのに、そのことには思い至りません。
例えば、冷房の当たらない場所へ移動させてもらう、係の人に頼んで温度を調節してもらうとか、冷房を止めてもらうとか。具合が悪くならないための行動の選択肢はいくつかあるはずです。
でもなぜか、最後まで文句を言わずに我慢します。冷房の冷たい風にあたり続ける、という運命には抗えないと思っているかのように・・・・・
このように我慢をし続ける、という行動の背景には、自分には今起こっている問題を解決する能力がない、というような「無力」または「無能」感を自分に対して抱いていることが考えられるのです。
これは「自分の能力に対する値引き」です。自分で解決できる力があるはず(かもしれない)のに、そのことに気づきません。自分は無力だと疑いなく思い込んでいるからなのか、変えるための行動に結びつきません。
自分は無力だという感覚
問題を解決しようとせずに、ひたすら我慢するという人の場合、実は、その方法を子どもの頃に繰り返していたことが考えられます。
大人となった今は冷静に考えてできる行動があるはずなのに、そうすることなく無力の自分を感じながら我慢し続ける場合、その時その人の心は「子どもの自我状態」にあると言えます。
(自我状態のお話は『アダルトチルドレンの心の中で起こっていること』をお読みください)
小さい頃の自分は無力で、守ってくれる親に見放されたら生きていけない弱い小さな存在です。親に捨てられたり見放されないために、その人は小さな子どものころ、ひたすら何かを我慢していたのかもしれません。おそらく、訴えずに我慢していれば、嫌なことをやり過ごすことができたのでしょう。
その子どもなりの生きるための戦略だった、ともいえます。
そのような経験が大人になった今でも何か影響がある、とは考えにくいかもしれません。
でも、自分でも気がついていないことが意外にあったりします。
さきほどの、苦痛な時間をじっと何もせずにひたすら我慢する、というのがひとつです。その背景的心理は、子どものころに覚えてしまった「無力感」が考えられます。
子どもの力では、何かの現状を変えるには小さすぎたり、知恵や言葉も足りません。
心理セラピーをしていると、「寂しさ」を訴えるクライアントさんが多くいらっしゃいます。ご本人の小さな頃の記憶をたどってみると、共働きの両親が留守の時のひとりの時間や、もっと小さな時では、毎朝保育園に預けられる時の母親が自分を置いていってしまう姿などが出てきます。
ひとりで心細くて孤独で・・・・そして「無力」な自分です。絶望感に近いものでしょう。
クライアントさんの多くが、多かれ少なかれ、このような「無力」が伴う「寂しさ」の記憶を心の奥に持っています。
自分は重要でない!
日本独特の文化的背景
自分の能力を値引きする心理的背景として、次に考えられるのは「自分は重要ではない」などという信じ込みです。ビリーフ(信念)や禁止令決断、などの言葉で呼ばれます。
自分が親や周りの大人たちからどのように扱われたか、によって「自分は重要でない」と感じてしまう度合いが違います。また、これには文化的な背景も大きく影響されます。
私のような昭和のど真ん中で育った人たちは、男尊女卑の文化の影響を受けている人も多く、女である自分は男よりも能力が低いとか価値が低い、と当然のように感じていたりします。
理屈で考えれば、男だからエライ、女はだめだ、なんてことがあるわけがなく、機能的な男女差があったりするけれど、本当は男女に関係ない人間的な個性や能力が異なるだけだ、とわかります。
でも、男尊女卑の風潮の中で育つと、女である自分は、価値が低いのだから、人前ででしゃばったり、自己主張などできない、と自然に思ってしまうのです。
男尊女卑だけではありません。日本には全体の輪のために個を主張しない、という風潮があります。これが「自分は重要でない」という信念をますます強める働きをしています。
「重要でない」自分は、冷房が効きすぎる場所をなんとかするための行動ではなく、文句を言わずに我慢する行動を当然のごとく選ぶし、それ以外の選択がない、と信じていたりします。
このような禁止令決断(ビリーフ)を日本人の8割位が持っていると言われるのは、文化的な背景もかなり大きいといえるでしょう。
しかし、自分を後回しにして全体や相手を尊重する行動が行き過ぎると、ストレスとなり、個人の幸せを枯渇させてしまうことにつながります。さらには、自己主張する他人に対するイライラや批判、そして時には攻撃となってしまうこともあるのです。
他人を批判や非難する場合も、「値引き」が起こっていると考えられます。そう、私たちは「他人の能力に対する値引き」もしています。
他人に対する値引き
他人に対して値引きをしている時、イライラや怒りで対処することが多いです。しかし、さきほどの自分の能力を値引きするのと同様に、問題に対して自分でなんとかしようという行動につながりません。
さきほどの、冷房が効きすぎている例で考えてみます。
私は友人と一緒に冷房が効きすぎたレストランにいます。私は幸いに、けっこうな暑がりなので、それほど困ってはいないのですが、敏感な友人は冷房が寒すぎると感じています。
すると、友人はイライラし、私に不平不満を漏らし始めます。「ここのスタッフは全然だめね、お客さんの様子をみてないじゃない、冷房効きすぎって気づかないのかしら」「私がオーナーだったらもっとちゃんとスタッフを教育するわよ」「こんなレストランこなけりゃよかった」・・・
しかし、友人はただ不満の言葉を隣の私に発するだけで、自分から何も動こうとしません。スタッフを呼んで「冷房調節できますか」「席を代えてもらえますか」などと言うこともできるはずなのに・・・
ここでは、他人の能力についての値引きが起こっているため、ブツブツ文句を言って座っているだけです。声をかければスタッフがわかり対処してくれる、という可能性を最初から否定しているのです。
さて、この友人は、どうなるのでしょうか。他人を値引きする人が取る立場はこんな感じになります。
友人は、大げさに寒そうなジェスチャーをしてみます。それでも、気づかれず、とうとう腹を立て、「気分も具合も悪いから私帰るわ」と言って帰ってしまいます・・・・・
おそらく友人は、子どもの頃もきっとこんな風に振舞っていたことでしょう。ひょっとしたら、自分がイライラしたり、機嫌を悪くしたら、周りが察して取りなしていてくれたかもしれません。
大人の自分で選べる選択肢
このように、「値引き」をしている時はたいてい、心が「子ども」の時の受動的な立場に帰ってしまっています。大人の自分として考える力、そして行動に移す力があることを忘れているのです。
自分で考えて、行動し、問題解決をするという選択肢があるのに、自分は無力だと思い込んでいたり、相手にも相手なりの考えややり方があり、問題を解決する能力があることに思い至らない、そのような状態です。
「値引き」という概念、少し複雑ですが、おわかりいただけたでしょうか。お悩みを持つあなたやアダルトチルドレンのあなたには「値引き」の感覚や経験がきっとあるのではないでしょうか?
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